しまなみ海道 夏紀行 ⑩

翌朝は5時前に眼がさめ、すぐさま海を眺めながらの朝風呂タイムと洒落込んだ。

空は少々曇っていたが、早朝の心地よい海風が吹きぬける。

湯加減も熱過ぎず、ぬる過ぎずちょうど良い加減で、疲れきった身体に最高に気持ちいい極楽気分で、このままいつまでも湯につかっていたい気分である。

さて、いよいよ本日が今回の旅行の最終日である。

これから朝飯食って、鞆の浦を散策した後は

広島空港から東京に帰るのみである。

3泊4日といっても、ほんとあっという間に時間が過ぎ去ってしまう。

さぁ、最後の一日がんばっていこう!

露天で朝風呂、サイコー!
朝餉の膳

朝風呂上りの朝食のあと、ホテルを出て辺りの散策に出た。

昨夜に飲みきれなかった冷酒を朝食時に出してもらって飲み干したせいか、ええ感じに酔っ払って気持ちいい。

ホテルでもらった散策用のイラスト地図を見ながら、海沿いの歩道を歩きだした。

 

鞆の浦は広島県福山市鞆地区の沼隈半島南端にある港湾である。

沿岸部と仙酔島、弁天島など沖の島々一帯は国立公園に指定されている。

歴史はかなり古く、万葉集に鞆の浦を詠んだ歌が八首ほど残されているらしい。

典型的な港町であるが、江戸時代に大きく整備され、その時代の港湾施設である「常夜燈」「雁木」「波止場」「焚場」「船番所」の全てが全国で唯一残されている。

また江戸時代中期と後期の町絵図に描かれた街路も全て現存し、当時の町絵図が現代の地図としても通用する。

そのような町は港町に限らず、全国に鞆の浦以外に例がないという。

今も残されている古い町並みは、2007年に『美しい日本の歴史的風土100選』にも選ばれている。

「えぇところや~」

風情のある町並み


鞆の浦の漁港

古い町並みをぶらぶら散策していると、まるで江戸時代にタイムスリップしたような感覚になってくる。

このままでいつまでも保存してもらいたい風景である。

ただ唯一気になったのは、観光客が細い路地を自家用車で走り回るのには少々興醒めした

「風情がないやっちゃのぉ~、アホ!」

 

港町の情緒を堪能しているうちに時刻は昼前になったので、ホテルに戻り仕度をしたのちチェックアウト、送迎バスにて福山駅まで戻った。

バスターミナルで広島空港までのリムジンバスの時刻を確認した後、駅前の和食屋でランチビール。そのあと14時15分発の空港バスに乗車し、15時半に広島空港に到着した

17時のANA684便の出発まで時間があったので、暇つぶしに空港ビルの牡蠣専門店に入店。牡蠣の燻製とか焼き牡蠣をつまみにまたまた冷やの日本酒を楽しんでいると、窓外で空が真っ黒に染まってくるのが見えた。

瞬く間に大粒の雨が落ち始め、雷鳴轟く豪雨となる。

「こんな天候でフライトできんのかいな?」
と思っていたら、案の定出発遅延のお知らせアナウンスが流れ始めた。

1時間ほどの待機の間に一旦雷雨は収まり指示されて飛行機に搭乗したらまた次の積乱雲が発生して、再び激しい雷雨。今度は機内で待ちぼうけとなり、結局出発できたのは定刻から2時間遅れの19時過ぎになってしまった。

「いやぁ最後の最後まで色々ありますなぁ」

長いようで短かった3泊4日の夏の一人旅。

しまなみ海道チャリンコ走破では数多の絶景を拝むことができたが、体力的にこれほど辛いと思ったのは、
高校の部活のしごき練習の時以来かも。。。

また松山も鞆の浦も初訪問なのに、何故かしらとっても懐かしい感じがする街だった。

「それは多分日本人であれば、みんな既視感があるんだろうな、きっと。

過去に見たことがある気がする風景なんだ。

古き良き時代を色濃く残す街並みは、全ての日本人の心の故郷なんだろう。

遠い昔の人々の情感が、現代に生きる我々に脈々と受け継がれているに違いない。」

そんなとりとめのない思いが漠然と頭の中を過っていた。

『さて、この次は何処の故郷を訪ねるか。。。』

機内の窮屈な窓から夜の闇に染まった雲海を眺めながら、僕は独りで呟いていた。

 

以上 おしまい