伯方島から大三島に入り、多々羅大橋を渡って、生口島に足を踏み入れると、そこからはもう広島県尾道市である。
生口島からはサイクリングのコースが海沿いから内陸側に変わるため、途端に景色が単調になる。
しかもルートのサインや路面の整備状況なども、愛媛県側より広島県側の方がかなり手を抜いている感じがする。
「広島、あかんなぁ!」
人っ子一人いない寂しい田舎道を汗びっしょりになって黙々と走り過ぎていく。
生口橋を渡り、因島に入る。
長い上り坂の、苦しい道のりが延々と続く。
腰が痛いなぁ。足も棒のようになってきた。
尾道まであと15キロ、まだまだあるなぁ。。。
おぉっ、久しぶりに視界に入ってきた海の色のきれいなこと、元気出るわ。。。
『暑いし、しんどいし、苦しいし、お尻も痛いし、もう走るのやめよ~かなぁ』
という誘惑が絶えず頭をよぎるが、美しい夏の景色を見ると、ちょっと気が紛れてくる。
腹が立つほど坂道が多く、次の橋までの距離が途方もなく長く感じた因島を、やっとの思いで走破し、いよいよ最後の向島に入った
あと5、6キロ走って、港で渡船に乗ったら尾道到着だ。
もう顔も腕も足も、真夏の強烈な日差しに焼かれて真っ赤に変色している。
時々意識が朦朧としてくると、頭に「南アルプスの天然水」をぶっかけて気付をする。
『もう少しで着くぞ、もう少しで。』
最後の力を振り絞って、ペダルを漕ぎ続けた
やっとの思いで16時過ぎに向島の渡船乗場に到着、そこから自転車とともに船に乗り込んで、尾道水道をわずか2,3分のクルーズである。
ちなみに乗船料百円、自転車持込料十円。
この渡船が現地の貴重な市民の足として、重宝されているらしい。
しばらくして渡船のスロープゲートが開き、乗客が下船しはじめた。
念願の尾道上陸であり、今回のしまなみサイクリング全行程の終了の瞬間であった。
『やっと着いた、長かったなぁ~。
でも無事に完走できてよかったなぁ。
チャリンコなんか久しぶりに乗ったのに、転んで怪我しなくて何よりだったなぁ。』
そんなことを思いながら、最後のお勤めである自転車の返却のために、お店に向かった。
(しまなみ海道 夏紀行 ⑨に続く。。。)