長崎 夏紀行② 九十九島の絶景に酔う~九十九島パールシーリゾートの魅力

2日間滞在した長崎市街を離れ五島列島の福江島で1泊したあと、船で佐世保港へ移動。

佐世保港のすぐ近くのJR佐世保駅前からホテルのシャトルバスを利用し、九十九島や佐世保の街を一望できる丘の上にある「弓張の丘ホテル」へチェックイン、しばらく休憩したのち、再びホテルの送迎バスを手配してもらい、『九十九島パールシーリゾート』へ向かった。

九十九島は佐世保港から平戸までの約25kmの海域に、複雑に入り組んだリアス海岸と208の島々で構成されており、人が住む有人島は4島、他はすべて無人島で、ほぼ全域が1955年に西海国立公園に指定され、288.5kmに及ぶ海岸線の80%以上が自然海岸のまま保全されている。
島は常緑広葉樹の森で覆われ、波静かな浦々は多様な生きものたちの棲家となっており、その島々は陽ざしの変化と共に刻々と表情を変え、季節ごとの花々や鳥たちが彩りを添える景観は、何度訪れても飽くことのない感動を与えてくれる。
『九十九島パールシーリゾート』は、そんな九十九島の魅力を味わえる人気のリゾート施設である。

私もホテルの部屋の窓からも九十九島の眺望の一端が望めたので、その景観の素晴らしさは理解していたが、今回はより近くで島の一つ一つをじっくり眺めようというわけである。

まずは遊覧船パールクイーンで九十九島クルージングを楽しむため、遊覧船ターミナルへ行き、13時出航分の乗船チケットを購入、そして約1時間の出航時間までの待ち時間を利用して隣接する『九十九島水族館海きらら』を見学することにした。
『水族館海きらら』はまるで九十九島の海を海中散歩しているような気分を味わえる水族館で、自然豊かな九十九島に生息する様々な生きものを見ることができる。

入館してチケットを買い、順路を進んでいくと、まず『五島の海水槽』でアオウミガメや全長約2mもあるタマカイという世界最大級のハタに遭遇。

このタマカイという魚、普段はおとなしく、ぼーっとした佇まいをしているが、餌を前にすると急に獰猛なキャラに豹変するらしく、凄まじい吸引力で小型のサメなどを丸呑みしてしまうらしい。
何物にも動じそうにないふてぶてしい面構えと緩慢な動きが不気味というか、一種の愛嬌があるというのか、とにかく不思議な魅力を持った魚である。

そして次はいよいよ海きらら名物の、120種類13,000匹の生きものを展示した水深4.8m、水量650tの九十九島湾大水槽の前へ。
回廊式の通路から見ると、この大水槽の魅力たるや、まるで自分が海中を散歩しているかのような錯覚に陥り、また水槽に屋根がないためたっぷりと降り注ぐ陽光が小魚の群れに反射して何とも美しい幻想的な眺めになるのである。
私も思わず時間を忘れて見とれてしまった。

次の見どころはイルカプールで、ハンドウイルカのニーハとナミの元気な2頭がボールや浮き輪と延々と戯れている様子に大いに癒される。
水中での俊敏な身のこなしと、垂れ目と口角の上がった口が醸し出す表情のギャップが何とも言えずかわいい。

どうしてイルカってこんなに愛らしいんだろう。
そもそも世の中にイルカが大嫌いという人がいるのだろうか。

ちなみに1日に3回おこなわれているイルカの体験プログラムでは、日本初のジャンピングキャッチボールが楽しめるらしい。

最後は光と音楽、映像とともにクラゲの生態を紹介している「クラゲシンフォニードーム」を見て廻ったいたら、遊覧船の出航時間が迫ってきたので、ターミナルへ向かった。

ターミナルではすでに遊覧船が停泊している。
九十九島遊覧船「パールクイーン」はその名の通り優雅な白い船体が特徴で、総トン数199t、全長約35mで定員は280名(118席)、1日に5回出航し、1回の所要時間は約50分である。

遊覧船のデッキ
出航~!

遊覧船は牧の島、横島、桂島などの狭い島々の間を縫うように航行し、途中「松浦島」という場所で行き止まりになると、ここで船が華麗にUターンするのが見所の一つになっている。
船内は冷房が効いて快適だったが、私は写真を撮るため苛烈な日光が照りつけるデッキに出た。

船はゆっくりとした速度で進み、時折かなり島に接近する。
深い森に覆われた小さな島々の海面に近いところは、黄土色の岩肌がくっきりと露出している。
これらの太古のままの姿を現在に留めた島々を至近距離から眺めていると、改めて地球の大自然の神秘さ、スケールの大きさに驚嘆する。

「江戸時代には潜伏キリシタンの人々が、島々に移り住んで信仰を守るためにこの海を渡ったのか」
時折吹きつける生暖かい海風を全身に受けながら、私は眼前に拡がる壮大な景観に圧倒されていた。

人工的なものが皆無の、まぎれもない手付かずの自然だけがそこにあった。