『上機嫌で生きる』 有川真由美

文筆家であり写真家でもあり、ご自身の座右の銘である「旅をするように生きる」を

しなやかに実践されている有川真由美さん。

何と今までに50を超える仕事に就いた経験をもとに、働く女性をテーマにした様々な生き方や働き方に関する執筆や講演にたいへん人気がある作家であるとのこと。

私が最初どういう経緯でこの方の著作に巡り合うことになったのか、記憶は定かではないが、おそらく一番最初に読んだのがこの「上機嫌に生きる」である。

人は自分に無いものを求めるというが、その当時の私の心情にとって最も遠いと感じていたのが、この「上機嫌に生きる」ということだったのではないかと思う。

その時はよくある「心の持ち方、考え方のハウツー本」だろうという軽い気持ちで手に取って、どちらかと言うといつも不機嫌(・・・)な自分を手軽に変えたい、元気になりたいという虫の良い魂胆を持っていたのだろう。

しかしいざ読み始めてみると、そんな安っぽい魂胆は吹き飛んでしまうほどの迫力がこの本にはある。

この著者の様々な経験に裏付けされた力強い主張が、気品あふれる文体を纏って読む者の心に深く染み入ってくるのである。

内容は

  • 思いどおりに生きる習慣
  • 「最高傑作の自分」をつくる習慣
  • 日常を楽しむ習慣
  • ラッキーを集める習慣
  • 人と調和する習慣

の5章で構成されている。

「こころからやりたいことをやること、そうなると信じて疑わない事、

 こころにブレーキをかけるのはやめて「そうなる」と信じる人だけが、限界を超えていける」

というメッセージはこの著書を貫く重要なテーマを象徴している。

 「死ぬときに後悔することの一つは自分の人生を生きられなかったことである」

「幸福度が一番上がるお金の使い方は「モノ」より「経験」を買うこと」

「しんどいことから逃げ回らないこと。その行程を楽しもう」

読み進めるほどに、著者の生き方に対するゆるぎない信念、姿勢に圧倒される。

「自分の好奇心に素直になって行動に移そう」

「ひとは自分の思った通りの人になる。だからなりたい自分を手に入れるためには、

セルフイメージを拡げていこう」

「時間の使い方は命の使い方である」

徹底的に自分を見つめ、本当の自分自身を認識し、そしてそれを尊重する。

リスクや困難があろうとも、それを乗り越える努力を厭わずに「真の自分」を追求する。

「自分の好きなことをして、自分の人生を生きなさい」

様々な苦労の末にたどり着いたと思われる、著者の境地に裏付けられた強いメッセージが、この矛盾に満ちた社会で働く女性たちの心に雷鳴のように響くのであろう。

そしてさらに

「自分というものを追求し肯定していくなかで、他人と調和する習慣を持ちなさい」

と著者は説く。

「他人の意向を忖度して迎合する人生ではなく、確固とした個を確立したうえで他人と調和し繋がっていこうとする主体的な人生を選択しなさい」と訴えるのである。

人生を楽しむために「上機嫌で生きていこう」

この極めてシンプルでアグレッシブなテーマが、著者独特の、まるで慈愛に満ちた聖母の読み聞かせのような優しい語り口で紡がれていく。

未体験の方はぜひ一度、その著者の力強さと優しさのアンビバレントな魅力に触れて頂きたいと思います。

上機嫌で生きる なぜかうまくいく人の幸せになるクセ