先週の土曜日、「タクシードライバーのテーマ」のピアノ伴奏との音合わせに臨んだ。
定刻に行くと、いつものレッスン室とは違う階の部屋にピアノのインストラクターのU先生が待機していた。
「じゃあ、とりあえず最初から通してやってみようか。」
サックスの担当インストラクターのK先生からさっそく指示が出る。
「先週からかなりの回数練習してきたし、家ではなんとか伴奏のCDを聞きながら全体を通して演奏できるようになった。落ち着いてやれば大丈夫。。。」
そう自分に言い聞かせながら準備に入る。
U先生のピアノ伴奏が始まった。
ピアノはCD音源の伴奏より少しゆっくりめに感じる。
一応出だしは問題なく立ち上がり、サビのメロディーに差し掛かる。
「あっ、」
やはり気持ちが焦ってしまうのか、さっそく一音外してしまった。
「落ち着け!」
短い間奏に入る。
やはりドラムや他の楽器が入っているCD音源に比べ、ピアノ単独の伴奏は音のメリハリがわかりづらく、聴き慣れないと演奏に入るきっかけに迷う箇所がある。
気を張って一音一音聞き逃さないようにしないといけない。
いよいよアドリブパートへ、まさに聞かせどころだ。
「あせるな!」落ち着いて確実に指を運ばなければならない。
苦手な指廻しは、どうしても動きが硬くなる。
そうすると緊張からか曲のテンポに遅れまいという意識が過剰に働いて、逆に運指が早くなってしまう。
「やばい!、速すぎる」
少し乱れたあと、すかさずそのあとの小節で速度を落とし微妙にリカバリー。
そしてやはり聞かせどころの速弾きのパートはどうしても音が飛んでしまう。
「あせるな、あせるな、一音一音丁寧に吹かなければ。。。」
自分に言い聞かす。
ここは繰り返し繰り返し練習するしかない。
大詰めの最終のパート。
ここは運指はそれほど難しくないが、かえって油断しやすいので気を抜けない。
情感を込めて丁寧に、そして慎重に指を運ぶ。
「よし、何とかまとまった。」
細かいアラを探せばきりがないが、とにかく通しで何とか吹ききった。
「へぇー、よく練習したねー。頑張ったね。」
K先生がちょっと驚いた表情で大げさに褒めてくれた。
まぁそりゃそうだろう、先週の段階では全く通しで吹けるようなレベルまで至ってなかったからなぁ。
「あとはどれだけカッコよく仕上げられるか、細部を修正していきましょ。」
K先生の言葉に、何か急に目の前がパッと開けたような気分になった。
「よし、あとは本番までに死ぬほど練習して、目をつぶってもスラスラ吹けるようになろう!」
私はその時、サックスを演奏する喜びが身体の奥底から溢れるように湧き上がってくる感覚に打ち震えていた。
(SAXに魅せられて。。。⑤へ続く・・・)