3年前の早春のある休日の昼下がりに、突然SAXに恋をした。
これまで楽器を触ることなど、学生の時の音楽の授業以外には一切無かった私が、何を思ったか、50半ばになって突然SAXを習おうと思い立ち、すぐさま駅前のビルにある音楽教室を訪ね、気が付くと体験授業の申し込みをしていた。
そしてその次の週にはもう、新品のアルトサックスを買っていた。
それから3年、現在に至るまで毎週土曜日のレッスンにほぼ休みなく通い、三か月に一回のサイクルで開かれる発表会に参加するようになって、今では恥ずかしげもなく時々ではあるが人前で演奏している。
会社勤めの身で、それほど豊富に練習時間を確保できる環境でもないため、ひいき目に見ても、それほど上達しているとも思えないが、少なくとも3年前は、自分が人前で楽器を演奏している姿など想像もできなかった。
それが今では、これまで意味不明な記号の羅列にしか見えなかった楽譜を何とか眼で追いながら、なんとか演奏できるようになった。
この現実ってなんだろう?
冷静に考えてみると、じわじわと喜びがこみ上げてくる。
大勢の人の前で、自分の技能を披露している、ある意味自分自身をさらけ出しているという事実に心が高揚してくる。
今だ初心者の域を脱していないため、かなり気恥ずかしいけれども、一方では、私の心が「自分を表現する」ということの至福感を噛みしめている。
実際は発表会が終わるたびに自分の不甲斐なさに落胆し、練習が充分でなかったことを後悔し落ち込むのだが、しばらくするとどういうわけかいつも「今度こそはもっとうまくやろう!」という意欲が自然と湧き上がってくる。
飽きない。。。
そう、子供の頃から人並み外れて飽きっぽい性格の私が、SAXだけは今のところ全く飽きない、ものすごく楽しいのである。
そして心の中で「今度の演奏会で、史上最高の演奏をする!」
いつもそうつぶやくのだ。
そしてまさにその「次の演奏会」は6月、もう2カ月を切った。
その時は刻々と近づいている。。。
さて、どうなることやら。。。