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お金が貯まる人になるための心構えを身につけるための教科書 ~『お金が貯まる人が捨てた37のこと』~ 田口智隆著

思い返せば、若いころから浪費家だった。

社会人になった頃から、欲しいものはクレジットカードで衝動的に買ってしまう性格で、「金は天下のまわりもの」だと本気で信じていたから、借金はすぐに積み上がるが、貯金などというものはできたためしがない。
飲み食いについても、倹約するという気持ちが無いからついつい高い店で散財してしまう。
読みたいと思った本は、「自己投資」という言い訳のもとに即買いするが、積読になることも多々あった。
そのうちパチンコ、競馬にハマり、それで金を増やそうと甘い夢ばかり見ていた。

要は、私と言う人間は収入に見合ったお金の使い方やお金の残し方について知識やスキルが皆無な、マネーリテラシーが見事なまでにゼロの人間だったのである。

今回紹介する本はそんな私と同じような性癖の方々のために書かれたものであり、お金に対する自らの姿勢を根本的に変えるための入門書として非常に有益である。
私もこの本を読んで、改めてお金というものを自分自身でコントロールしていく重要性に気づいた。
(今更かよ!もうほとんど手遅れやろ!!!というツッコミが聞こえるようであるが。。。)

人間、若いときは色々欲望も多いし、世の中の誘惑にも抵抗力が弱いものだ。
したがって若い時分から将来を見据えて蓄財、投資をし、早期の経済的自立を目指すような堅実な人は世の中にそれほど多くはないであろうと推察するが、もしあなたがそんな賢明な人であれば、この本を読む必要は皆無である。

しかしこの私のように、会社人生のリタイア時期間近になって、殆どお金が残せていないことを痛烈に後悔するような事態を回避するためには、出来るだけ年齢が若いうちにこの本を読んでマネーリテラシーの基礎を学んで頂き、一刻も早くお金をコツコツ育てていくためのタネ銭づくりを始めてほしい。
そして20、30年後に大きな果実を実らせ、お金に振り回されない豊かな人生をぜひ手に入れて頂きたいと切望する次第である。

この本で筆者は言う。

「お金なんてそのうち貯まる」という考えを捨てる

・「そのうちなんとかなるさ」と思考停止していると、一生お金に振り回されるだけの奴隷で終わってしまう。

・お金のことを真剣に考えなければいけないのは「いつか」ではなく「今」である。

私はまさについ数年前まで、「お金なんてそのうち貯まる」と思っていた。
「まぁ、何も今すぐジタバタする必要もないかな。まだまだ人生長いし。」
なーんて言っている間にはや齢50半ばである。
なんと愚かな人間であろう。。。

この期に及んで自己嫌悪に苛まれる日々である。
間違ってもこういう人間になってはいけない。

そしてもう一つ響いた一文、

「金持ちは収入の高い人」という発想を捨てる

・年収の多い・少ないは、「金持ち」とは何の関係もない。
年収1,000万円だろうが、1億円だろうが貧乏な人は存在する。

・お金持ちかどうかは「収入と支出のバランス」によって決まる。

言われてみれば当たり前なのだが、これが案外認識できていない人が多い。
「もっと収入が多ければ、余裕ができるのになぁ」と安易に考えがちだが、
いくら稼いでも、それに比例して支出も増えればお金はやっぱり残らないのである。
これも今更ながら耳が痛い。
グルメを気取って、あちこちの有名店を巡っては、分不相応の出費をしたり、
部下や後輩に見栄を張って、計画性も無いまま気前よくご馳走していた過去の自分のバカさ加減に嫌になる。

この本に書いてあることは、何かお金持ちになるための目新しい、斬新な方法を披歴するといったような内容ではなく、至極あたりまえな「お金の使い方」「貯蓄」という行為に対する基本的な心構えについてわかりやすく説いたものある。
しかしあたりまえではあるが、継続して実践することは極めて難しい。
人間はついつい楽な方に流される怠惰な生き物であるからだ。

不思議なことに、今に至るまで日本の公的な学校教育において「基本的なマネーリテラシーに関する教育」は殆ど行われてこなかった。
だから日本人は海外に比べて資産形成が極めてヘタな国民である。
その証拠に、多くの高齢者が長年汗水たらして貯めた預金を、殆ど金利がつかない銀行口座にじっと寝かせている。
80や90歳になっても、将来に備えて、いざと言う時のために貯め込んでいる。
そしてけっこうな大金を残して死んでいくのである。
でも、そんな人生、楽しいのか?

日頃から自分の人生設計において、お金といかにうまく付き合っていくかということに問題意識を持っている方も、そんなことなど全く意識してこなかった能天気な人も、この本をきっかけにしてぜひもう一度自分自身と真摯に向き合い、自分なりのマネーに関する方針を確認して頂きたいと切望する。

そして人生の早い時期から経済的自立に向けてのステップを踏み出し、長期的視点で目標達成を目指してほしい。
自分の人生を素晴らしい、自由で豊かなものにするために。

筆者はこの本を次の一文で締めくくる

「お金は人を幸せにもするが、不幸にする力も持っている」
お金で不幸になる人は生活習慣に何か問題があるのだ。

私も自らの生活習慣が原因で、人生のある時期にお金で不幸になってしまった過去を持つが、その苦い経験を無駄にしないためにも、これからはお金とうまく付き合い、幸せで豊かな人生を送ろうと強く決意している。

マネーリテラシーに関して自分は疎いと自覚がある方はぜひご一読を!

 

お金が貯まる人が捨てた37のこと
(株)ファイナンシャルインディペンデンス
代表取締役 田口智隆

だんくろー

ごくごくフツーの会社員。 仕事はほどほどに、Sax演奏、一人旅、飲み歩き、歌舞伎鑑賞、読書をこよなく愛す。 老後は「旅をするように生きる自由人」になるのが夢。