6月下旬の土曜日、ぐずついた梅雨空のなか、新橋演舞場6月公演、熱海五郎一座『船上のカナリアは陽気な不協和音』夜の部に赴いた。
熱海五郎一座の舞台を観るのはこれで通算4回目になる。
初めて観たときから、三宅裕司の笑いのセンスに魅せられて毎年通っている。
今回はレギュラーメンバーの渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太、東貴博(深沢邦之と交互出演)、劇団スーパー・エキセントリック・シアターに加えて、ゲストに小林幸子を迎えて、歌ありダンスありの豪華なエンターテイメントショーを織り交ぜた爆笑喜劇になっている。
今回は三宅裕司&Light Joke Jazz Orchestraも参加して、劇中でジャズ演奏を披露するという音楽を盛り込んだストーリ設定上、俳優の会話によって笑わせるという要素は、これまでより少なかった感は否めないが、個人的にジャズは大好きなので、バンドの生演奏はそれはそれで大いに楽しめた。
喜劇としては、渡辺正行のお茶目なキャラクターを前面に出して笑いを取る構成になっているようで、渡辺がいちばん台詞も多く、終始大活躍であった。
特に三宅との掛け合いはかなり計算されて作られているようであり、しかも都度アドリブも加味されているらしく、三宅の一種サディスティックな長丁場の突っ込みに、渡辺が芝居を忘れて素で笑ってしまう場面で観客は抱腹絶倒、大喜びであった。
小林幸子も生歌が素晴らしいのはもちろんのこと、時折さりげなくかます「ボケ」も堂に入ったものであった。
特に「思い出酒」を歌うくだりのボケの「間」は最高レベルで、そのあとの三宅の素早い突っ込みによって会場は一瞬にして大爆笑の渦に包まれた。
カーテンコールでの各メンバーのコメントもさすがベテラン揃いの年の功で、どれも秀逸、こちらは老化現象のせいもあるのか、涙腺が崩壊していつまでも涙が止まらない。
ハンカチで目頭を拭いながら、会場を後にした。
最後の最後まで提供側のサービス精神満載の大盛り上がりの公演であった。
三宅は劇中でメンバーの高齢化をしきりに嘆いて笑いを取っていたが、ぜひ来年もより進化したベテラン勢の“腕”を見せてもらえることを楽しみにしたいと思う。